波乱万丈の一日(2006年7月27日)

その記録

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「どや、俺ももう一人前になったやろう」
「巣の縁なんか怖くないぜ」
「そろそろ羽ばたきの練習でもするか」
「お、餌を持ってきてくれたで」
「いつも、おかあちゃんはこっちから、持ってくるから、ここが一等席なんや」
「おれ、一番。場所とった」
「まってまって、そこは私が」
「あれー」
「どうしたの」
「足滑った」
「おとうちゃん、おにいちゃんが・・・」
「何を馬鹿なことをしてるんだ。早く巣に戻れ」
「うん。よいしょ。あれ、何か変」
「どうしたんだ」
「うん」バタバタ。バタバタ。
「もう少しだから、頑張れ」
「うん。何とかなるかも」
「あれ、おとうちゃんがいってしまった」
「お兄ちゃん、自分のことは自分でするのがツバメだって。それが出来なきゃ見捨てるっておとうちゃんはいつも言ってたでしょ」
「うん、そのつもりやが、どうも、足が引っかかったままなんや」
「れれれ」
「どうしたの、おにいちゃん」
「あれ、地面が頭の上に見える」
「馬鹿なこと言ってないで上がってきなさいよ」
「お前、それ本心か。おれがいなくなれば、餌が独り占めできると、喜んでいるんだろう」
「そんなことないわよ」
「おかあさん、おとうさん。お兄ちゃんが大変よ。誰か来て」
「ありがとうよ。その気持ちだけでも嬉しいぜ」
「あーあ。俺の人生もここまでか。短い付き合いだったけど、さよなら」
「おにいちゃーん」
「ぐつすん。おにいちゃーん・・・」
ここで、画像に、人間の手が伸びてきました。
しかし、ツバメは今のところ肖像権を主張していませんが、人間は主張する恐れがありますので、その場面は割愛いたします。
「おにいちゃん、よかったね」
「うん、まあな」
しかし、この日は、これにとどまらなかった。
実は、朝から、この難敵が出現していたのだ。
巣を脅かしているのか、親愛の情を示しに来ているのかは分からないが、いずれにしても、ツバメにとっては、お邪魔虫のスズメであった。
「おにいちゃん、こわい」
「うーん。おいらは、こわくねえぞ」
「怖くて隠れるんじゃないからな。お前を守ってやるためだからな」
「おにいちゃん。ありがとう」
「おかあちゃーん」
「うえーん。こわかったよおー」
「まだ、その辺をうろうろしているのか。はやくいなくなれ」
「帰らないと、突っつくわよ」
「へん。お父さんが帰ってきたら逃げていきやがった」
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